2007年08月19日

オーベルジュ・ベリナスでの2週間 (その7)

 昨夜はすごい雨と雷だった。今朝は霧が凄い。霧の前の僅かな間の空はピンクと薄いブルーのグラディーション。木々はモノクロ。

 調理場に下りる階段のところでシャム猫のヴォーズが子羊のレバーをピチャピチャ音を立てて食べている。朝っぱらからヘビーな餌だなぁ・・・。
 最後の花を活ける。ついでにフィロの口元から垂れ下がっている毛もカットしてあげる。大人しくされるがまま。
 泊まりのお客さんの朝ごはんの支度もあるので結構忙しい。

 キャティが今朝は心なしか無口だ。いつも私にいたずらを仕掛けてくるのに。シェフとその奥さんと3人で毎日働く大変さは私が一番知ってるよ。話をする同僚は一人もいないんだから。愚痴を誰にも言えないもんね。言ったとしてもわかってもらえないしね。
 今日の昼の賄いは鴨のテリーヌと、ステーキはモーリユ茸とマッシュルームのクリームソース掛け。フライドポテト添え。最後だからと、この店のスペシャルを昨日から食べさせてくれている。美味しいけど、すごくヘビーだ。

 13時37分発のSaint Yrieix駅からの列車に乗るためタクシーが13時に来る。それまで仕込みを手伝う。
 しきりにシェフが時間を気にしている。「今日から静かになるなぁ・・・」と言ってくれる。タクシーが来た。記念に、いつもしていたエプロンをもらう。
 キャティに私が日本から持ってきたコックコートとぺティナイフをプレゼントした。せっかくここにいるのだから、しっかり料理を覚えていい料理人になるんだよ。キャティは30歳。9月で31歳。私がレストランを開いた歳と同じくらいだ。
 ミシューにお礼のキスをする両頬に。シェフは両頬に2回。キャティは出てこない。タクシーに向かう。キャティが私を呼ぶ。キャティにも2回キス。
シェフが手をあげる。猫背の体を伸ばすように一歩前に出て。何て素晴らしい姿なんだろう。思いが胸に伝わる。その姿が全てを語る。下手な役者に子の姿を見せてあげたい。思わず時が止まる。キャティも手をあげて止まったまま・・・。
タクシーが走りだしてしばらくして、涙が止まらなくなった。きっとあの立ち姿は一生忘れないだろう。
posted by Yuko at 00:00| ESSAY | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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