2020年02月13日

日本料理 花のれん「花楽」

暑くなったら作る料理や、寒くなったら作る料理がある。こうも暖冬だと、なかなか作ろうとしないパエラを、2週間ほど前から作っている。

なぜパエラは寒くなったら作るのかと言うと。
オーブン全開で作るパエラは、オープンキッチンだと、暑くなる。寒いからいいではないかと思われるが、カウンターこっちの調理場は、真冬でもクーラーをかける。カウンターのこっち側と向こう側の調整が難しいのだ。

な訳で、寒くなったから、パエラを。
スペインスタイルではなく、私の専門の南仏料理のパエラを。水は全く使わず、貝のスープとトマトで米を炊く。オーブンで密封して1時間かけて仕上げるのだ。渡り蟹と数種の貝と烏賊、チキン、野菜などの具で。

それと、墨烏賊を使ったイカ墨のフィデウアもこの時期はよく作る。
スペインのカタルーニャ地方のパスタのパエリアだ。アリオリソースといただくと、ほんと、美味しいのだ。このイカ墨も水をほとんど使わない。

先週、常連さんで、画家でもあるKikiちゃんから築地の水彩画を頂いた。
忘れないうちに描いてみたと言って。

夜明け前の築地だ!
私の聖地の築地だ!
オレンジ色の裸電球が不揃いに狭い通りをクネクネとある、あの、築地だ!

35年通った。
どんなに眠くても、あの狭い路地に立って、不揃いの裸電球の通りを歩くと、目が覚めて、ウキウキしていた。何年経っても、荷は重いし、辛いはずなのに、ウキウキしていたなぁ。

鰯屋のバカや、他所で買った魚も捌いてくれる店や、冗談も符牒も飛び交った。仕切りがあってないので、あちこちの店の声が飛び交うのだ。

豊洲ではそれがない。もう2年も行ってるけど、まだ馴染めないでいる。それでも始発で仕入れして、夕方までかけて仕込んで。

今日の夜は、久々の花楽へ行く。

ホセとダイソンと3人で、料理長前のカウンターの席に並んだ。

@飛龍頭(千石黒豆入り)
A穴子の酢味噌のせとノレソレの親子和え
B雪割れ椀(長芋と蕪のすり流し うすい豆ムース入り)
C鰤大根(といっても、鰤のお造りの皮をカリカリに焼いたものと大根おろし)醤油のフレークのせ
D五色揚げ(銀杏、金時人参、蕗の薹、海老芋、黒豆)
この五色を頂くと、縁起がいいとか。金時人参は梅で煮てから揚げたもの。一手間かけた分美味しいです。
E蛤の葛煮 マツモ、茗荷、霰柚子、一寸豆
F自家製 生カラスミ
G猪の頬肉の麹煮の鍋 白味噌と玄米のこうじで。葱、湯葉、麩
猪頬肉は、玄米麹のせいで、すごく柔らかく、しみじみ美味しい。
H三輪漬け(紅芯大根の薄輪切りの柑橘漬け)
これ、大好物です!
I鯛とろ
80歳くらいのご婦人のお客様が、「鯛とろってご存知?」と聞いてきたそうな。つくり方を聞いて、試行錯誤を繰り返して出来た料理だけど、食べますかって、聞かれた。断る人っているはずが無い。二つ返事どころか、5つ返事くらいの勢いで「食べる‼︎」

多分、その方は四国の出。瀬戸内海あたりは鯛が有名。鯛の料理は独特なものがある地域。この鯛とろは、結婚式の引き出物に渡される鯛を美味しく最後まで食べる為に作られた郷土料理だが、結構手間がかかる為、広まることがなかったのだろう。
鯛を骨ごとすり潰して、ペースト状にして、そこに、胡麻をすって合わせ仕上げていくとか。
ご飯にのせて食べるのだが、青ネギと白い卵の千切りものせていただいた。お茶漬けが合うかと思うと聞いて、確かに!
山葵か塩昆布を乗せてもいいかもと。
お出汁を入れてもらうと、塩昆布より山葵が正解とわかる。メチャメチャ美味しい!幻の料理ダァ〜!
「きっと、鯛ドロって、最初は言ってたと思うんです」と料理長。
なるほど、形状はドロっとしている。きっと、鯛どろ→鯛とろに変化したんだね〜。

11.白魚の卵とじ丼と香の物
かなりお腹いっぱいだけど、これも頂く。なんどかいただいたが、やはり美味しい〜。
12.柚子の花楽餅
13.苺の汁粉
苺を蒸している。
苺をジュースにして濃縮したものを小豆の汁粉に入れてるのだが、苺の香りが充満している。見た目は汁粉色なのに。

ダイソンアキちゃんが、今日が一番美味しかったと言うけど、前回も何度かそう言っていたような。毎回驚きがあるなんて凄いよね〜。
ほんと、引き出しが広い。
この料理長の料理を一生食べていきたいと思う。

「暖冬で、漁れる魚が変わりましたか?」と、アキちゃんが質問した。
やはり、変わるらしい。
「昆布が心配なんです。昆布の代わりになるものは何かないか、いつも頭の片隅にあります」と、料理長。

どんな仕事もだろうけど、終わりはない。いつも前に進む。

posted by Yuko at 23:08| 食歩:日本料理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする