2016年09月28日

kitchen5は、あと何年…。

旅から帰るのを待ってたかのように、この店の不動産屋さんから、文書が手渡された。
それは、この建物(店舗は3軒)を建て替えると大家さんからの事情を書いたものだった。
そこには、耐震検査の結果が、補強工事では間に合わず、立て替えなければならなくなったと。

3軒の店と大家さんとのスケジュールがなかなか合わず、話し合いは、26日に不動産屋さんで行われることになった。

その間、何とも落ち着かず、隣の店(鮨まつ)のKさんと、何度か話したり…。

うちの敷地でやらないかとか、今建築中の自宅の下が店舗だから歓迎するよとか、ありがたい話もチラホラ。

当日が来た。隣のKさんがドアを叩いたので、一緒に行く。

結論から言うと、建て替えなくなったというか、取り敢えず5年先になった。
5年というのは、隣の店が6年の定借契約で、まだ、一年しか営業していなく、あと、5年残っているからだ。

大家さんは、たんに、地震を心配してただけだった。

この建物の、強度はかなり低い。
耐震検査の数値をかなり危惧しての事だった。

もし、熊本地震級なのが起こったら、被害保証や怪我人、死人もでるかもと。
こんな危険な建物をそのままにしておいたのかと非難されると心配でならなかったようだ。

私は、地震ではなく、他の理由が隠れているのじゃないかと思っていた。それで…。

「地震だけが心配なんですか?前回の、地震のときに、スパイスの小さな瓶が一つ、コトっと倒れたくらいでしたよ。自宅に帰ったら、泥棒が入ったかと思うくらい色んな物が落ちてました。だから、結構あの建物は丈夫なんだなと思いました。昔の職人の仕事は凄いんだなとも。あの建物が潰れるくらいの地震がきたら、他も、ここ(不動産屋)だって潰れてますよ。天災なんだから、それは、大家さんの責任でもないし、その時は、諦めますよ。ここに泊まってるわけでもないし、その時は素早く逃げます。それくらいの運動神経はあります。」
と、言ったら…。

他の二つの店の人もそれぞれに、
「僕もそう思います。地震のリスクとここを出るリスクを計ったら、従業員の、生活もあるし、地震の心配は全くないです。」←「かどや」

「」いやあ!僕は、あと、5年やらせてもらえるんでしたら、有り難いです。地震は、全く心配してないですよー」←「鮨まつ」

大家さんが今度は拍子抜けしてた。
「ええー!もっと早く聞けばヨカッタァあ!もう、こんなところにいられませんと言われるかと…」

建て替えの具体的な計画はまだ決まっているわけではないが、建て替えると決めたのだから、早く皆さんに知らせなければと思ってと、人柄のいい大家さんらしい理由だった。

そのあと、大家さんの弁護士さんが、
「もし、のちに、地震がきて、こんな建物をそのままにしてるからだ、保証しろとか、言ってない言ったにならないために、一筆サインとかになるかもですねぇ」と、水差すような。
ま、そういう事を、言う人もいるかもだし。

弁護士さんの仕事はそう言うことだし、次回また集まってと言うことになりそうだけど、一応、建て替えは、少なくとも5年先になった。

なんか、気が抜けたあ。

この店は、私の料理人としての生活に最も理想的なのだ。
場所がいい。家賃が安い。これは本当にありがたい。

うちの店は年間半分も営業していない。
夏休みは1ヶ月と長いし、冬休みだって長い。そして週休3日だし、営業時間はすっごく短い。申し訳ないくらい短い。
店の運営からすれば、恐ろしく効率が悪い。
それでも何とかやっていけるのは、家賃が安いおかげだ。

店の営業時間も日数も少ないが、調理時間はどこよりも長い。
朝、6時半から店の閉店まで、まず、座ることなく仕事している。

店を始める時の目的は、今もブレていない。
(経営者になるのではなく、料理人になりたい)

店を出したのは、生きていくため。いい料理人になる為に投資を自分の体にしているのだ。その為に、休みは必要。
休みの日に、しっかりソースを作る。フォンを仕込む。仕入れに走る。営業日だけじゃ足りないのだ。

人を雇えば?と言われるし、弟子を育てろとも言われるが、あくまで私の目的は、いい料理人になりたい。
人を育てるより、自分が育ちたい。1人で作り続けるのことに拘るのは、そんな理由からだ。

最近は、海外へ働きに行くこともなくなったが、仕入れに行く事も可能なのは、この場所で、この大家さんのおかげでもある。

posted by Yuko at 23:00| 日記:西麻布事情 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする