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2000年11月20日

不思議な香りの国(レバノン編 その1)

 今回はどこへ行こうかと決める時、いつも頭の隅に候補にあがるのだが、いつも"またの機会にしよう"とはずされてしまう国、レバノン。"中東のパリ"と、かつて言われた華やかな国。不思議な香り、スパイシーな国というイメージ。

  やっぱり、やってきましたレバノン人が、私の店に…。
 テニスプレーヤーのカルロスさん。

 「レバノン料理って中東でも一番美味しいんだって?!」と言う私の問いに、レバノン料理について、そして母の料理について長々と話してくれた。

 やっぱり、いつもの通り聞いてみた。
 「レバノンに行ったら貴方のお母さんの料理が食べたい」

 二つ返事でOK!

 難関はビザ取得だなんて思わなかったなァ…。
 レバノン大使館に電話を入れ、ビザ係りに廻してもらう。
 「ビザを発行していただきたいのですが」
 「ツァーでなく、個人ねェ。会社で働いてる証明書が要ります」
 「自分でお店やってるので、証明書なんて無いんですが…」
 「じゃぁ、発行できません。私はなにも意地悪で言ってるんじゃないんですよ。決まりですからね。団体ツアーで行きなさい」
 「いや、ひとりがいいんで…」
 「じゃぁ、ダメね」

 そんなぁ…。直接大使館へ行く事にする。
 私は料理人で、是非レバノン料理を食べたいし、作りたいと話すと、ビザ窓口の鶴田さん、電話の時とは違い、感じ良い。

 「あらぁ、そうなのぅ。それなら是非行っていただきたいわぁ。日本に美味しいレバノン料理屋がないのよゥ。渋谷に一軒あるんだけどね。あれがレバノン料理だと思われると心外なのよね。是非作ってほしいわァ。美味しいのをねッ!じゃぁいい方法があるわ。大使宛に手紙を書きなさい」

 へッ!変なのゥ…。そんなの聞いた事ない。ビザをくださいって大使に手紙書くのぉ?!
 しょうがない。書くかァ。

 「私は西麻布で小さなレストランをやっています。夏と冬に一ヶ月ずつ店を休み、スパイスロードをテーマに旅しています。私の店にレバノン人がやってきて言うのです。いかにレバノン料理がすばらしくて、美味しいか。私の頭の中は、"食べたい!"で、いっぱいなんです。中東料理の中心であるレバノンを除いては、私の料理の地図が完成しない」

 この手紙と、ニューヨークタイムズ紙に掲載された私の記事のコピーを添付して、再び大使館へ行く。

 鶴田さんが、「まぁ、あなた、そういう人だったのゥ。私からも大使に言っとくわよぅ。
 是非行ってね。タプ―リ、作ってね。私の好物なのよぉ」

 この日は金曜日だった。月曜の昼頃、鶴田さんから電話があった。
 「OKよ!」
 「ええっ!もう、発行されたんですかぁ!?」

 お礼のアイスクリームを手土産にビザを取りに行くと、「私の姉がね、レバノン人と結婚して、日本大使館に勤めているのよ。もう30年も住んでるの。内戦の時もあちらにいたのよ。料理が大好きで、上手なの。紹介しましょうか?」

 「是非、是非、絶対、紹介してください!レバノン料理も教えてくれるように、よろしくお願いします!」

 1943年にフランス委任統治下にあったレバノンは独立した。国土は岐阜県と同じくらいの大きさだ。ちなみにレバノンとはセム語で「白」の意。中東ではめずらしく白い雪山があり、この地方の人々には印象が深く、この名になったらしい。゛中東のスイス゛とも言われる。

 12月31日昼頃レバノンの首都ベイルートに到着。ベイルートでは、USドルで全てOKだ。空港から中心街までタクシーで30USドル。

 スーツケースを引っ張りながら、どのホテルにしようかなぁ…。そう、いつも予約をしない。見て決めるというおおざっぱなタイプなの。BRISTOL HOTEL にする。決め手は中心街にあるということで、夜、ひとり食事をして歩いて帰っても危険がなさそうな場所。

 そして、ガイドブックに美味しいレストランがあるとあった。
 「部屋は空いてますか?」と聞くと、なぜか、な〜んにも言ってないのに、ディスカウントしてくれた。幸先いい!

 鶴田さんのお姉さん、アキコさんに電話する。明日、つまり元旦の昼12時にホテルまで来て頂くことになった。

 待ち合わせはロビーで。一階のレストランが騒がしい。ランチのビュッフェの仕度の真っ最中らしい。シェフらしき人がいる。すりすり歩み寄って、"美味しそうですね"と話しかけると、食べろ食べろと味見させてくれた。うっわぁ〜い、美味しい!美味しい!とやってると、私を呼ぶ声がする。アキコさん夫妻だ。

 口をもぐもぐさせながら挨拶、"はじめまして"「このホテルはよーく知ってるのよ」ということで、ランチはホテルのマネージャーの奢りということらしい。やったぁ、ビュッフェだぁ。それにしても満員。ここがアラブとは思えない。フランス領だった事もあり、女性はとってもおしゃれ。ドレスの人も多い。 いやぁ困ったなぁ、ものすっごい種類。ほんの少しずつ皿に盛る。一皿じゃとても足りない。困ったなぁ。一応三皿でやめておく。ひとつひとつ説明を聞く。

 魚のクッペ。魚のすり身のなかに詰め物をして揚げた卵形のもの。ファタイヤという、星型のほうれん草のパイ。スゥィハという四角型のパイ、これにはザータルという、オレガノ、ゴマ、スマック等が入ったミックススパイスをかけて焼いたもの。ちなみにザータルは、物忘れを防ぐと言われてるそうだ。多めに食べよう。そうだ、あいつらの土産用に買っておこう。

 ラムのレバーのソテーは、レモンのかわりに、柘榴の絞り汁を使う。ムタッパル、これは焼きなすのペーストとゴマのペースト、タヒーナと呼ばれる物を混ぜ、レモン汁をかけたもの。シャンクリッシュ、これはレバノンだけにあるチーズ。このボール状の白チーズに、オレガノをまぶしたシャンクリッシュは、ホークで潰して、オニオン、パセリ、トマト、青葱、大蒜等のみじん切りと混ぜて食べる。とっても美味しい。もう倒れそうなくらい食べた。1日目にしてこれだもの。この先どうなっちゃうんだろう?!